【コード進行解説あり】Deniece Williams「Free」は儚く、そして美しい

私は東京で生活をしていますが、最近まで日中と夜の気温差がかなり酷く、
風も相まって夜の帰宅時は秋か、はたまた春先の寒い頃かと思うような時がありました。

そんな少し肌寒い夜なんかに、まさにピッタリな曲がありまして、
こいつを聴きながら川沿いなんかを夜歩いて帰ると、その日の疲れも一瞬遠のく程です。

フリーソウル好きなど、ご存知な方も多いかと思います、
76年発表、Deniece Williams(デニースウィリアムス)のアルバム『This Is Niecy』に収録されています“Free”

今日はこの曲を見ていきたいと思います。

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ただただ美しい

この一言に尽きますが、ほんとに美しい曲です。
Denieceの歌声はもちろん、各楽器のアンサンブル、歌詞、そしてコード進行、
どれを取っても美しい。もちろん例外なくシンプルな楽曲。

この曲を歌うDenieceは、その透き通るような美しい声で、よくMinnie Ripertonと比較されますが、それもそのはず。
Minnie Riperton、Syreeta Wright、そしてDeniece Williamsの3人で、
あのStevie Wonderのバックコーラスを努めていた過去があります。

ちなみにこの曲は、ライブ音源などもありますが、
歌の雰囲気やバックの演奏も含め、このアルバムバージョンが一番この世界観を示せていると思います。

かなりハイトーンまで出るんだけども決して刺すような鋭い音ではなく、どこかまろやかで透き通るような歌声で、少し幼くも聴こえる。
いわゆるソウル系の女性シンガーって、割と強くたくましい声のイメージがありますが、
良い意味でそういった前のめりな感じがないので、非常に聴きやすく癒される。

だからこそ、光が当たる中にもどこか儚さが全体的に残り、その脆さを美しいと感じる楽曲に仕上がってるのだと思います。

サブドミナント感にやられる

さて、この曲の雰囲気を作り出す大きな大きな要因ですが、コード進行もうまーく作られています。

|F#m7|G#m7|C#△7|

こちらサビ部分というかメインメロのバックですが、
これは、C#メジャーをキーにして、

|Ⅳm7|Ⅴm7|Ⅰ△7|

という解釈ができます。
Ⅳm7、Ⅴm7はノンダイアトニックですが、こちらは同主調のC#マイナーキーにおける、
Ⅳm7、Ⅴm7を持ってきています。
俗に言う、借用和音の一つでサブドミナントマイナー、ドミナントマイナーなんていう呼び方もされたりします。

聴けば分かりますが、
マイナー調で上昇していきトニックに解決すると同時に、そのトニックがメジャーキーに変化しているため、”切な度”が膨らんで膨らんで、、、最後にパーン!とキラキラした広がりが強調されるような効果を発揮しています。
このように解決先のトニックが同主調のメジャーに変化する進行は、聞き手の意表をつくのに効果的で、キラキラ感というか、△7thコード感が強調されます。
9thも足せばより効果絶大でおすすめですね。

完璧なバンドサウンド

いやー、ほんとトラックとしても、個々の演奏としても本当にムダが一切なく、
全てのサウンドがこれでもかという程、この曲の世界観を作り上げてDenieceを支えていますよね。
それもそのはずといいますか、何を隠そうこの曲はEarth, Wind & Fireのメンバーにより演奏されています。
もちろんプロデュースはMaurice White(正確には共同プロデュース)なわけですが、
Mauriceの作るサウンドってどうしてこうもかっこいいんでしょう。。
ファンキーなサウンドは当然ですが、こういったメロウな雰囲気の曲も素晴らしい。

この曲の雰囲気をうまく演出しているのは、やはりウワモノ全般ですね。
さすがにホーンの使い方とか絶品です。

しかし、実はリズム隊がそれ以上に良い働きをしていますね。
ドラムは非常にシンプルな刻みですが、時おり要所要所に出てくるオープンハイハットがめちゃくちゃかっこいい。
そしてドラムに絡むギターはもっとシンプルですが、このカッティング音がまるでドラムサウンドの一つとして聴こえるといいますか、とんでもなくドラムと共に曲を推進させる動力となっている気がします。
こういう働きこそ、アレンジの最高峰ですよね。最終的には各楽器がどうこうではなく、総体として一曲を成すことが本来は大切な点ですね。

そしてベースは、、なんて大人の甘いベースなんでしょうか、、、、
顕著な箇所で言うと、E7の時に繰り出される和音は、惚れ落ちるレベルですよこれ。
このフレーズだけでこの楽曲の世界観を半分くらい担ってしまっているようにさえ思えますね。
そして我慢して我慢して、キーボードソロ時にだけ少しラインを動かすスマートさ!
このメリハリにまた我々リスナーはやられてしまうわけですねー。

この曲は信じられないことに、40年前の曲なんですよね・・・
全く以て今でも人々を魅了し続ける曲ですが、
それと同時に、この独特の切ない雰囲気のためか、40年前当時のアメリカについつい思いを馳せてしまうような心境に毎度なります。
なんと言いますか「この曲だけがいつまでも40年前の面影を伝えているんだよなー」という感情が沸き、もう二度と戻らない時があるんだなと、勝手にしんみりしてしまいます笑

さて、今夜はもう少しこの曲を聴いてみようと思います。