【私的レビュー】Window Seat/Erykah Badu <from『New Amerykah Part Two』(2010)>

いやー、10月は久しぶりにErykah Baduの話題で多いに盛り上がった。

エリカ・バドゥの来日は、幕張の野外で2014年9月に開催されたStarFes以来3年ぶり。
しかも今回は単独公演も予定され、これは2010年のZEPP TOKYOと横浜ベイホールでの来日公演以来、約7年半ぶりとのこと。

僕自身は2014年のStarFesで、野外イベントでのエリカバドゥを観たため、
今回は屋内で静かに観るためビルボード東京での最終公演に参加。
まあ何よりビルボード東京史上最高額と言われるチケット代であったが、
内容からすれば、3万ちょっとのチケットなど(実際かなり迷ったけど)本当にタダみたいなものに感じてしまう素晴らしいものだった。

というわけで、
このライブの話は尽きないが、今日はエリカバドゥの過去の名作を取り上げる。

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エリカバドゥが警察に訴追された曲

本日は、Window Seatについてみていく。
※残念ながら今回観に行った公演では披露されなかった(はず)

こちらは2010年発表のアルバム『New Amerykah Part Two (Return of the Ankh)』でリードシングルとしてリリース。

曲そのもの以上にPVが非常に話題になった作品で、
エリカバドゥの故郷でもあるテキサス州ダラスにて、真っ昼間に路上を歩きながら1枚ずつ服を脱ぎ捨てていき、
全裸になったところで射殺される(演出)という内容。
しかもその場所は、かの有名なケネディ大統領の暗殺現場であり、中々ショッキングなPVであると同時に、無許可での撮影が判明し、警察に訴追されたことでも話題を呼んだ。

さて、このWindow seatが収録されている、
『New Amerykah Part Two (Return of the Ankh)』は、
ジャケット画のインパクトの強さに、何となく聴きにくい内容を予想してしまうが、
むしろ全体的に落ち着いた楽曲が多い印象。
中でも、このWindow Seatは初期のエリカバドゥっぽい楽曲と評されることが多い。

メッセージ性の強さという意味では、例のPV含め非常に深い示唆がある楽曲だが、
確かにサウンド面では非常に心地よく、一聴すると初期Baduizmにあってもおかしくないような雰囲気。
しかし全体的に、粘りやグルーヴは残しつつも、クドさが無く、(特にリズム隊が)非常にタイトでより洗練された空気感が出ているのがさすがか。

タイトさに尽きる

この曲のクレジットを確認すると、
ベースがサンダーキャット(Thundercat)、ドラムがクエストラブ(Questlove)となっている。
うーん、リズム隊だけでも納得のメンバー。

サンダーキャットは、今でこそ多弦ベースで自由自在にプレイしているイメージが強いが、
こういうシンプルなベースプレイも実は非常に素晴らしい。
特にこのWindow seatでのプレイは、休符というか”抜き”のプレイが見事。
普通なら全編にわたって弾いてしまいそうだが、それだと恐らくこの変化の少ない曲はダレて聴こえてしまう。
そこを大胆に休むことで、ベースがいざ入ってきた瞬間の推進力や不気味さが際立つ結果となっている。
加えて、言うまでもないが、ベースの音価も完璧。
音の切り方と、抜きどころというグルーヴにおける大原則を見事に具現化しているプレイだと思う。

また、クエストラヴのハイハットの刻みは本当に絶品。心地よすぎる。
フレーズ自体はループ的であるにも関わらず、スネアのピッチの高さや、キックの入れどころなどなど、
ずっと聴いていられるドラミングはまさにクエストラヴの真骨頂。
余談だが、こういうドラムを打ち込みで再現しようとすると非常に勉強になるんだよなあ。
いかに楽譜に書かれない部分で深い表現をしているか。。。

コード進行は?

パート的には基本3部構成になっており、

【A】
Dm7(11) Cm7(9) ※繰り返し
A7sus4/B

【B】
B♭m7(9) Gm7(9)

【C】
E♭△7 D♭△7

という感じ。

例によって、ボイシングで響きは簡単に変わってしまうので、
それぞれ下記のように弾いてみてほしい。

【A】
Dm7(11)
下の音から、D C D F G

Cm7(9)
C B♭ D E♭ G

A7sus4/B
B A D G

【B】
B♭m7(9)
B♭ A♭ C D♭

Gm7(9)
G F A B♭ D

【C】
E♭△7
E♭ G B♭ D

D♭△7
D♭ F A♭ C

こうやってみると、Aメロを中心にトップノートが美しい。

ちなみにオリジナル盤でのボイシングを参考にしているが、
Youtubeでいくつかライブverを観たところ、トップノートにもう少しテンションを足して緊張感を出している様子で、
そのライブごとの変化も些細だが注目してみると楽しい。

全体的にはAメロからBメロという流れでマイナーコードが続き、
特にBメロはピアノが奏でるベースラインが印象的で、暗くかつ緊張感が一番ある。
まさにブリッジ部。
そして、Cメロで初めてメジャー7thにいき、一気にキラキラと広がる、というシンプルな構成。

どの音も曲の顔に成り得る

このシンプルさの中でハッとさせられるのは、
全ての楽器に意味が与えられているということ。
例えばこの楽曲から、ピアノ、ベース、ドラム、コーラス、どれか一つ抜ける部分はあるかと考えると、
一つも思い浮かばない。
一切ムダのない音選びを行うということは、鳴っている音がどれもその曲にとっての顔に成り得るということなのかもしれない。