ラップもバトルも存在しない。ローファイなヒップホップが最高すぎる(2/2)

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さて、前回はヒップホップの1つ、ローファイヒップホップというものの存在をご紹介した。
今回はいよいよローファイヒップホップと日本との不思議な関係について考察する。

※前回記事はこちら


ローファイヒップホップは、比較的新しい(ここ最近数年か)ヒップホップであり、
従来のヒップホップの荒々しさやメッセージ性の強さとは対照的に、サウンドはローファイで、曲自体はBGMとしても十分機能するほど心地良く、
良い意味で主張しない丸い雰囲気のヒップホップと前回記した。

さて、そんなローファイヒップホップだが、何故だかYouTube、soundcloud等で聴く際に、
ジャケット画に日本のアニメと思われる絵が高頻度で使用されているケースが多い。
また、曲自体にもジブリ系の曲がサンプリングされていることもよくあり、
とにかく日本文化との接点を感じる曲が非常に多いことに気づく。

しかし、アーティスト自身は日本人ではなく多くは外国人なのである。
ローファイヒップホップと、日本の音楽には一体どのような関係があるのか。

ローファイヒップホップはネット発?

まず、ローファイヒップホップは独自の出自がある。
これまで音楽は、世界各地の文化や風土を受けて誕生したものが多いとされるが、
しかし我々が生きる今は、ネットで世界が繋がっている時代である。

となると、当然「国」や「地域」ではなく、
「インターネット」という場(あるいは一つの文化でもあるが)から音楽が生まれる可能性は大いにあるし、実際その通りになっている。

そして、まさにこのローファイヒップホップこそ、ネットから生まれ、ネットを通じて拡散されてきた、いわゆるミーム的な音楽ではないかと言われており、
これが日本のアニメや文化との相性が良い原因の一つではないかと思う。

そちらに詳しい人は分かると思うが、同様の出自をもつ近しい音楽に、
Vaporwave(ヴェイパーウェイブ)というジャンルがある。
こちらは私はあまり詳しくないのだが、既存の楽曲を例えばそのままピッチダウンするなど処理し、そこにミュージシャンが新たに音を加えて曲にするようなことがなされており、
これは従来のサンプリングという考えより、ネットへの違法アップロードという現代の文化が絡んだ面白い要素を抱えている。

※この話も中々興味深いので、気になる方はこちらが分かりやすい。

さて、話を戻すが、
上記したようにローファイヒップホップは、「ヒップホップ」とは言えども、
いわゆる黒人文化で〜のそれとは全く異なる独自の背景を持っており、
ネットを通じて広まったという最大の特性がある。
特にヨーロッパでの流行があり、アニメや日本文化と元々相性の良いヨーロッパの人やネット民たちの間で育まれ、ヒップホップとアニメの接点が生まれたのではないかと考えている。
ある意味では非常に現代を象徴するような音楽ジャンルの一つでもあるのかもしれない。
※厳密に言えば、この動きはローファイヒップホップに限らない

Nujabes「サムライチャンプルー」の功績

上記したミーム的理由以外に、もう一つこちらも忘れてはならないだろう。
それは日本が世界に誇るトラックメーカー、今は亡きNujabesの存在である。

ヒップホップシーンでは現在でも神のような扱いを受けるカリスマであるが、
彼を知らない方はぜひググって、そして実際に音を聴いてほしいが、
「jazzy hiphop」などと呼ばれるトラックスタイルを確立した人で、
それまではhiphopのトラックと言えば、いわゆる黒いグルーヴに則った典型的なものであったが、彼の作るものはそうではなかった。

非常に綺麗なサウンドで、どこかノスタルジックな雰囲気を纏ったトラックが特徴的で、
それまでのヒップホップとは全く違う観点で曲が作られているかのようであった。
一言で言えば、まさに極上の音、なのだ。

ここで気づいた方もいると思うが、
そう、まさにこの特徴は、ローファイヒップホップとかなり共通している。

そんな彼の大きい功績の一つに、とあるアニメの音楽制作を担当した過去がある。
それは、『カウボーイビバップ』を手掛けた渡辺信一郎監督によるテレビアニメシリーズ、
『サムライチャンプルー』である。もう今から14年前のことだ。

アニメのオープニング等にヒップホップを使うという、
中々に当時異例の決断を渡辺監督がし、Nujabesはこのアニメの音楽を担当したのだ。
やはりここでの活躍が、『サムライチャンプルー』という「日本のアニメ」を通して、
Nujabesを、そしてNujabesの代名詞でもあるjazzy hiphopの存在を世界に知らしめたことになる。
まさに、ローファイヒップホップの原型を作り、さらに日本のアニメと親和性をもたせる大きなきっかけとなったのである。

ただの作業用BGMなんかではない…

さて、今回記してきたように、
ローファイヒップホップという少し異色のヒップホップが生まれ、さらに日本のアニメや日本文化との接点を見せる理由には、ミーム的な流れと、Nujabesの功績、
これらが重なり合って今に至る、というのが大筋の答えではないだろうか。

そう考えると、ローファイヒップホップは「作業用BGM」としてレッテルを貼られるほど浅い音楽ではないのである!笑

確かに「聴きやすい」が、その主張しない聴きやすさの背景には、”語り得ぬもの”があるのかもしれないし、BGMとしてだけ聴くにはあまりに勿体ない。

まずは全て手を止めて、この極上の音楽にしばらく身を委ねてみようではないか。
きっと、時間がゆっくりと流れるのを感じるはずだ。

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