【セルフブランディング】Linkedin村上氏 × 元Googleピョートル氏 対談レポート

コラム

先日、セルフブランディングに関する対談イベントに参加してきた。

よく語られる文句ではあるが、終身雇用の崩壊、副業、テレワークなど働き方の変化、そしてSNSの爆速的な発展の現代では、フリーランスのクリエイターは当然のこと、一般企業に勤めるサラリーマンも、個々人が様々な発信力や活動の幅を持てる時代となっている。
そうした中で、いわゆる「セルフブランディング」が今後ますます重要な視点になっていくことは明らかであり、今回のイベントではセルフブランディングを通して、「働くこと」の意味を考える良い機会となった。

イベントレポート

【参加イベント】
MiraiForum#14 自分の軸から生まれるキャリア 〜価値発信から始まる自己実現〜

【登壇者】
村上臣 氏
大学在学中に仲間とともに有限会社「電脳隊」を設立。その後統合したピー・アイ・エムとヤフーの合併に伴い、2000年8月にヤフーに入社。一度退職した後、2012年4月からヤフーの執行役員兼CMOとして、モバイル事業の企画戦略を担当。2017年11月にLinkedInの日本代表に就任。複数のスタートアップの戦略・技術顧問を務めている。
(本イベントページより引用)

ピョートル・フェリクス・グジバチ 氏
プロノイア・グループ株式会社 代表取締役社長/ モティファイ株式会社 取締役
2000年に来日。ベルリッツ、モルガン・スタンレーを経て、2011年Googleに入社。アジアパシフィックにおけるピープルディベロップメント、2014年からグローバルでのラーニング・ストラテジーに携わり、人材育成と組織開発、リーダーシップ開発などの分野で活躍。2015年に独立してプロノイア・グループを設立。『0秒リーダーシップ』『世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか グーグルの個人・チームで成果を上げる方法』『NEW ELITE』『Google流 疲れない働き方』『日本人の知らない会議の鉄則』著者。
(本イベントページより引用)

【会場】
WeWork@Marunouchi Kitaguchi

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※以下、対談内容

■お二方はそもそも、なぜ働くのですか?

村上氏:
「やりたい、経験したい」と感じることをバイト時代からやってきた。お金よりも経験だったり、舞台の裏側をのぞいてみたい、という「働くことを通じて色々知る」ことを働く上で一番重視している。
祭りは見ているより参加した方が楽しいというか、「煙があがってるところに常にいたい」という意識が昔からあった。

ピョートル氏:
同感。お金のために働くのではなく、自己実現のために働きたい。利他主義を持って、好きなことをする時ほど人は集中し、社会に価値をもたらす。
自分は、好きでもないことでお金を稼いで、勉強のためにそれを費やし、また勉強のために働く、という時を過ごしてきたが、そういったことを世の中からなくしたい。「好きなことをやれば、お金ももらえる」という流れを作りたい。
そういう意味では、働くという定義を180度変えるために今働いているのかもしれない。

■あなたの価値はなんですか?

村上氏:
自分の価値を考える上で、自己評価と他己評価、努力と成果、これらはそれぞれリンクしていないという事実に気づくことが重要。自分の持っているスキルが、その会社でどういうバリューを生むのか、という観点をもてると、評価、お金がついてくるし、そこを起点に広がりが生まれる。
よって、私自身の価値もこれまでその時々で環境によって異なっていたが、それはそういった仕組みに気づけたからだと考えている。

ピョートル氏:
その通りで、「自分が世界にもたらしたいこと」と「世界がもたらしてほしいこと」というものがある。
前者だけで突っ走ると、どうしても世の中からポカンとされてしまうので、ここのバランスを考える必要がある。
まさに「ブランド」というのは、自分以外の世界からの評価そのものなので、どんなことが評価されるのか、を考えてアプローチしていくことが重要。
グローバル人材に共通していることでもあるが、私自身のストレングスとしては、発言することを恐れない点だと思っている。
なぜそうするかと言えば、「発言する、メッセージを伝える」こと自体が好きなのもあるが、メッセージは強く、何度も発信しないと人には中々伝わらないからである。

■どう意識して発信していますか?

村上氏:
それこそ自分自身の価値というものは、いる場所(環境)や時期で変わるので、それぞれに合わせてこれまでやってきたが、発信先のそのコミュニティを考慮することが重要。
例えば、SNSでみせる自分というものは使い分けを意識している。リンクドインでは、代表を務めるということが前提にあるので、プロフェッショナルな自分、Facebookは昔からの知り合いだから少々ドジっ子な自分、ツイッターは完全に趣味というかアイドルとか自分の関心事を呟く。
そのコミュニティに対し、自分が価値あるもの、有益なものを提供できるか、という視点が重要。

ピョートル氏:
個人的には書籍という形での発信が一番多いが、こういったリアルな場所もそうだし、SNSももちろん、媒体は様々あるが、大切にしているのは「媒介者」として多くの人を刺激する役目になること。
自分ひとりでは大きな変化は起こせないかもしれないが、多くの人に響けば、とても大きいムーブメントになる。そのための発信を意識してきた。

■あなたにとってのビジョン、ミッション、バリューはなんですか?

村上氏:
自分には、いわゆる大きな野望というものが無いが、しかし一つ言えるのは、自分含め多くの人が「幸せに暮らしたい」というただそれだけを望んでいるのではないだろうか。
幸せの定義はもちろん人それぞれなのだが、しかし、ある意味この資本主義においては、仕事をする上で幸せを感じられるかどうかはとても重要な要素だと思っているので、多くの人にとって望ましい仕事の機会だったり、ネットワークを繋げられるような場を提供するのがリンクドインのミッションであり、私自身のミッションでもある。

ピョートル氏:
誰もが自己実現できる社会を創りたい、というのがミッション。
個人が自己実現するためには、まず「自己表現」が大切だと考えていて、表現するためには、「自分にもできるかもしれない」という自信も必要になる。自分なりに表現したことが社会に貢献して、周りの人たちから感謝される。それが自己実現の瞬間だと思う。

村上氏:
(ピョートル氏の発言を受けて)ただ、自己実現と企業という観点で一つ注意したいのは、「うちで働けば自己実現ができる」と語る企業。
これって、「会社についていけば自己実現させてやる」みたいな考えが根底にあるわけで、それは果たして本当に可能なのか。
自己実現は自分の意思で見つけて自分で実現するもの。だから、本当は自分で自分にとっての自己実現とはなにかを定義し、それを実行できる会社を見つけて共感をもってそこで働く。本当はそれ以外で、会社と自己実現を結びつけることは難しい。

自己実現なんて人によって価値観や基準が異なるんだから、今の日本の一般的な企業が、新卒一括採用の従来のやり方で個人のそういった部分までカバーできるとは到底思えない。

■(参加者からの質問)一般的に日本人は発信が苦手とされるが、そういう場合にどう工夫するとよいか。

村上氏:
日本人は発信が苦手、というより、置かれた環境によって発信のハードルに差がでるのではないだろうか。例えば、食べたラーメンの投稿とか、自撮りの投稿とか、そういった発信はよく目にすると思う。
とはいえ、自分の意見はこうである、といった発言に躊躇するのであれば、「~についてどう思いますか?」というような、意見を出すのではなく募る型の「ファシリテーター役」になることを強くおすすめする。
こういったことを繰り返すと、「こいつの周りにはいつも良い意見が集まる」というブランド性が生じ、結果的に自分の周りに面白い人が集まりやすくなるので、これも一つの重要なブランディングになる。

よく自分で話すのが、「呼ばれる人になる」ということ。そのためには、「私はこれに興味あります」という旗揚げを常にしておくこと。
何か起きてから「実はそれ興味あったんです」ではなくて、常日頃手を挙げていれば、いざそういった場で声がかかるし、周りも応援してくれる。だから、こういった旗揚げは一企業の中で行うのも非常に重要である。

イベント参加してみて

個人的にはそこまで新しい情報はなかったが、しかし改めて「セルフブランディング」というものがただの小手先のスキルではなく、”価値”というものの根本を問う、本来当たり前の正しい姿を目指すものであることを認識できた。
最近になってよく耳にするようになったこともあり、一見「セルフブランディング」とは何か新しい言葉や概念のように感じるが、要点はいたってシンプルであり、「価値=ブランド性とは、他者にとっての評価」であることを認識して行動するということ。つまりは、「自分が何者であり、どういった価値を提供できます」これをいかにシンプルに、誠実に伝えられるか。

今回のイベント中にも話題になったが、ただの「ラーメン画像の投稿」は誰にとっての価値になる得るのか。
ただの「おいしかったです」では知人以外(いや、知人もか)誰も興味がないが、しかし「スープだけでなく、麺も他店では無いような○○を使った美味しい塩ラーメン、これは銀座駅からすぐの○○にあります。」などと紹介やレビュー形式にするだけで、それは誰かにとっての「情報」となり価値として捉えられる。その繰り返しが、その人を「ラーメン情報を聞くならこの人」というブランディングへと勝手に繋がるのである。

そしてより一歩先で考えれば、この「ラーメンに詳しい人」というブランドをもった人は世の中にも多数いるが、「○○に詳しい」という他の要素がいくつも掛け合わされば、よりその人独自のブランディングが確立していく。

そういった意味で、私も「音楽に詳しい人」だけでなく、様々な軸を持てるように、複業であったり、面白い人たちと出会えるようなことを率先して行わねばと日々感じている。

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(追記)

本イベントのことを、登壇者の村上臣氏がまとめているので、下記もぜひご覧いただきたい。

その「ラーメン画像」に意思はあるか?ソーシャル時代の自己ブランディング
先日「MiraiForum #14 自分の軸から生まれるキャリア 〜価値発信から始まる自己実現〜」というイベントに出席し、プロノイア・グループのピョートル・グジバチCEOとソーシャルメディア時代のセルフブランディングについて対談しました。今回はこのイベントで私自身が伝えたかったメッセージをまとめました。 多くの日本企業...

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