前回の話から派生して、「音楽を聴く」に焦点をあてて今回も記してみたいと思います。
今回は完全に持論というか、実体験を伴って最近感じていることです。
音楽との距離は確実に近くなった
最近は便利なもので、わざわざTSUTAYAに行かなくても(無論CDなど買わなくても)、
音楽配信サービスが随分発達し、非常に便利な時代になりましたよね。
例えばバンド練習の後などで、参考音源をバンドメンバーから教えてもらった際に、
その帰りの電車でアルバム1枚まるまる聴けてしまうなんて当たり前の時代です。
そのフレキシブルさはミュージシャンにとっても相当便利なツールとなっているかと思います。
私もそれまで使っていたiPodを使わなくなり、2年ほど前はいくつかのストリーミングサービスを使用していた時がありました。
気になったアーティストは片っ端から聴き、どんどん新しい音楽と出会えることは非常に有益でした。
便利になった、でもドキドキ感はなくなった
ほんとこれなんです。
聴きたい曲なんて腐る程あったので、その頃はとにかく色んなアーティストを掘ってましたが、「ふーんなるほど」と1曲聴いたらすぐに次の曲に進んでいました。
しかしなぜか、聴きたい曲を聴くときのドキドキワクワクな感覚はあまりなく、
それよりも自分が探している曲をどんどん聴き進める感じでした。
そして、本当に気に入った曲ならまだしも、ほとんどが二回と聴くこともありませんでした。
何しろ他にもいっぱい聴ける曲はあるわけで、同じ曲を複数回聴くのは時間がもったいないようなもんでしたから。
でも、以前はどうだったかというと。。。
私はレンタルCD屋さんをよく利用していました。
とはいえ、毎日TSUTAYAに足を運ぶわけにもいかないので、まず事前に聴きたい曲やアルバムなどの情報をネットで探し、いわば"今回レンタルするリスト"を元に、TSUTAYAへ。
行けばいつもだいたい1時間は棚を往復し、時間をかけてリスト以外にもその場で興味の湧いたCDなどを選ぶ。平均して毎回アルバム15枚前後。
その探している時点でかなりワクワクしていますが、
帰宅後は聴きたい気持ちをグッとこらえつつ、まずはiPodへ。
常にiPodの容量はMAXだったので、一度に全て入れられず、借りた中から1枚ずつ日々入れていくわけですが、
「このアルバムはめちゃくちゃ聴きたいアルバムだから、最初に聴いちゃうのは何かもったいないからあえて明日にまわすか」とか、「ずっとジャズが続いているから、今日はエレクトロニカで。」みたいな(笑)プランを日々考えつつ、1枚1枚大切に聴いていくその感じは良いものでした。
もちろんCDを買うこともそれなりにあり、
なぜだか毎度切るのに手こずる封を開けつつ、傷がつかないように、指紋がつかないように、丁寧にPCに入れて聴く際のドキドキ感は、言うまでもなく、レンタルのそれよりもさらにさらに高揚するものでした。
なんでしょうね、聴くまでの思い入れもある分、「さあ聴いたるぞ!」っていう心構えが生じてくるのかもしれません。
所有感の欠如?
あと、この部分も大きいかもしれませんね。
今はどうなのか詳しく調べていませんが、音楽配信サービスだといわゆるダウンロードが無いじゃないですか。
あるけど、それはオフライン再生できるよって意味合いのものでしかなく、CDなどのように形に残るものでは当然ないし、データとしても所有できている感覚がない。
まあこの辺りが逆に利点というか、スピード感だったりライトさ故だとは思いますが。
というか、こういう感覚はすでに今の十代からしたら意味分かんないというか古い考えなのかもしれませんね…
一曲の重み
結局こういうことなのかもしれません。
思い入れもなく、お金もかからず(厳密に言えばかかっているけど)、時間もかからず、そういう中で聴いた曲って、やっぱり自分にとっての価値が少し薄れてしまうのかなと思います。
音楽の善し悪しって、中身というか音楽そのものはもちろん重要なんだけど、
でもそれだけではなくて、「音楽を聴く」というのは「経験(体験)」でもあるから、
その音楽そのものを味わうまでの過程や意味合いみたいなものが非常に影響を及ぼしてくる。
また、ストリーミングサービスだと、割とアルバム単位というよりは、
より細かく曲単位で捉えていたこともあり、アルバム1枚まるまる聴く感覚も必ずしもありませんでした。
なぜでしょうか、CD時代はつまらない曲も含めて飛ばさずに聴いていたのに、
ストリーミングサービスだとつまらない曲は即座に飛ばしていました。
結果、そのアルバムでまともに聴いたのは3曲、とか。そんなこともザラ。
使い分けの問題
冒頭でも記したように今回は私のただの個人的感想ですが、
共感していただける方も多いのではないかと思います。
ただ、そういった音楽配信サービスが悪いわけでは当然なく、
目的というか利点を踏まえて使い分けするのが一番素敵な使い方かなと思います。
だって、やはり即座にその場でアルバムをまるまる一枚聴けてしまえるスピード感は非常に有益ですよ。
聴きたい!と思った心に対して、時間を置く事なくその場で聴けてしまうのは、
とてもとても便利です。
加えて、「借りるor買うまでのレベルではないけど、あの曲だけ聴きたいんだよなーどうしようかな」という時もあるわけですが、そういう際も非常に都合が良い。
迷うまでもなく聴けてしまう。
つまり、様々な音楽をその場で手軽に聴けるというのは、自分にとってその分新しい音楽と出会える機会を作ることなわけで、我々ミュージシャンにとっても有益でしかない。
しかしその一方で、やはり1曲1曲、またはアルバム1枚としっかり向き合う時間も大切だろうと思います。
もちろん、音楽配信サービスにてそれが成し得ている、つまり「お前の意識が低いだけだろ」という方はそのままで良いのです。
ただ、ある種の"制限"(この場合は、そのアルバム1枚しか聴くものがない)が伴った際に、
心を落ち着けて聴くことができるという部分は少なからずあるなあと思います。
私は、そのドキドキ感の欠如に危機感を覚え(笑)、実際レンタルCD生活に戻りましたが、
やはりいいもんです。出会った曲に責任をもつ感覚、というと大げさですかね(笑)
皆さんはいかがでしょうか。
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